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広辞苑によると、薬害とは「薬品による害」「薬物による公害。
医薬品・農薬などにより人・動植物の健康被害が社会的に多発する現象」とあります。
1960年代に睡眠薬・胃腸薬・妊婦のつわり治療薬「サリドマイド」による
奇形、整腸剤「キノホルム」によるスモン(Subacute Myelo-Optico Neuropathy:
亜急性脊髄・視神経・末梢神経障害)という大きな薬害事件が発生しました。
サリドマイドは当初、西ドイツ(現ドイツ)で開発された睡眠薬。その後、胃腸薬の
効能が追加され、さらに「妊産婦のつわり予防薬」としても宣伝されたため、妊産婦が
服用して、多数の肢体不自由児が生まれるという世界規模の薬害事件に発展しました。
西ドイツでは、サリドマイドと催奇性の因果関係に関する研究成果が発表されたことに
より、早期に回収されましたが、日本国内では販売中止・回収が大幅に遅れたため、多
くの肢体不自由児が生まれ、日本初の薬害訴訟に発展しました。
サリドマイドは現在、「多発性骨髄腫」への有効性が確認され、厳しい手続きのもと
での使用が認められています。
スモンは当初、一部で伝染病と疑われましたが、その後、整腸剤「キノホルム」と
脊髄炎・末梢神経障害との因果関係が明らかになりました。1971年に被害者側が国と
製薬会社を相手に損害賠償を求め提訴し、1979年の和解成立まで8年もかかりました。
このスモン訴訟を契機に、医薬品医療機器法(旧薬事法)に「医薬品の有効性、安全
性の確保」規定が追加され、医薬品の副作用から患者を救済するための「医薬品副作
用被害救済基本法」の制定、医薬品被害救済基金(医薬品副作用被害救済・研究振興
調査機構を経て、現在は医薬品医療機器総合機構に業務が引き継がれています)が設
立されました。
なお、スモンは厚労省の特定疾患治療研究事業の対象に指定され、患者の医療費負
担分は全額公費で賄われています。
薬害エイズとは、ヒト免疫不全(HIV)に感染した外国の献血者の血液を原料に製
造された血液凝固因子製剤(非加熱製剤)を血友病患者に投与し、多くのHIV感染者・
死者を出した事件。
1989年に大阪、東京で国と製薬会社を相手に損害賠償請求訴訟を提起し、1996年に
東京・大阪地裁から和解勧告が出されました。国側は救済責任を認める一方、加害者
責任は否定しましたが、1996年に厚生省内から関係資料が発見され、当時の菅直人厚
相が原告団に謝罪して和解勧告を受け入れました。
厚生省は1999年8月、薬害エイズ事件を反省し、HIV感染のような医薬品による悲
惨な被害を再び発生させることのないよう、「誓いの碑」を敷地内に設置しました。
(厚生労働省HPより転載)
このほか、薬害としては、1993年のソリブジン事件、1996年薬害ヤコブ病、1998年フィブ
リノゲン問題などがあります。