先日,お寺で
母の三回忌を済ませました。
お経をあげてくださったのは,
ご高齢で長い法要が難しくなったというご住職に代わり,
初めてお目にかかる
副住職の方(ご住職の息子さん)でした。
法要の後でお話を伺ったところ,なんと
本業は医師とのこと。
医師として働き始めてから仏教系の大学に入り,
大学院まで進んで仏教の研究をされたのだそうです。
今はお寺の仕事をしながら非常勤医師として
多系統萎縮症や筋萎縮性側索硬化症など
神経難病の患者さんを診ておられるとのことでした。
仏教を深く学ぶ医師であれば,そういった患者さんとの向き合い方,
患者さんから受け取るものが,他の医師とは違うかもしれません。
患者さんへの声がけも,おのずと変わってくるのでは,と思います。
さて,ただいま発売中の
『新薬と臨牀』2月号には,
東京慈恵会医科大学附属病院の緩和ケア診療部で
スピリチュアルケアワーカー(
チャプレン)として活動されている僧侶,
神 仁(じん ひとし)先生のご講演録
「東京慈恵会医科大学附属病院における“いのちのケア”の実践」
を掲載しています。
ご講演によると慈恵医大の創設者・高木兼寛は,
医学を学ぶために渡ったイギリスで医療と宗教の協働を目の当たりにし,
日本でもその実践を目指したということです。
病院にお坊さんがいるなんて,と思う方もいらっしゃるかもしれませんが,
創設者の想いが今も脈々と受け継がれているがゆえに,
神先生のような宗教者が病棟で活躍されているのでしょう。
治癒が難しい病を得た患者さん,残り時間が限られた患者さんとの向き合い方に
マニュアルやガイドラインはありません。
科学が苦手とする
「正しい答えのない問題」に取り組むとき,
宗教の力を借りるというのも,
ひとつの方法としてあっていいかもしれません。
(梅)