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希少疾患「神経芽腫」

2021年6月29日

突然ですが「神経芽腫」という疾患をご存じでしょうか。

すでに知っている方,また字面からイメージが湧く方もいるかもしれませんが,
簡単に説明をさせていただきます。

神経芽腫とは,胎児期の神経堤細胞を起源とする細胞ががん化したもので,
特に0歳と3歳に発症のピークがある小児がんです。
日本では,毎年約160人が発症する,いわゆる希少疾病の1つですが,
小児がんのなかでは白血病,脳腫瘍に次いで3番目に多くみられます。

神経芽腫は,腫瘍が小さいときは症状がみられないために発見が難しく,
腫瘍が進行・転移したところで,
頭にコブができる,目が腫れるなどの症状をきっかけに診断されることが多い,
早期の診断が困難な疾患です。

この疾患は,臨床病期や年齢など5つの予後因子によって,
低リスク・中間リスク・高リスクに分類されます。

低リスク,中間リスクの患者さんの場合,
無治療での経過観察や化学療法,腫瘍の摘出術により治癒率が9割を超えます。

一方,神経芽腫患者さんの約4~6割を占める高リスクの患者さんの5年生存率は5割以下で,
治療は化学療法をはじめ,外科治療,放射線治療,
自己幹細胞移植を併用する大量化学療法などを組み合わせた集学的治療となります。

神経芽腫に対する治療薬として,先週6月23日,
小児がんをはじめとする希少疾病用医薬品とジェネリック医薬品を事業の主軸としている
大原薬品工業㈱が「大量化学療法後の神経芽腫」を適応とした
ユニツキシンⓇ点滴静注〔一般名:ジヌツキシマブ(遺伝子組換え)〕の
製造販売承認を取得しました。
https://www.ohara-ch.co.jp/wp/wp-content/uploads/2021/06/202106_23_info_J.pdf

希少疾病は字のごとく,発症数,患者数が極めて少ないため,
その研究・治療薬の開発には多大な時間を要することと思います。
ただ,発症数,患者数の多寡で痛みや苦しみに差があるわけではありませんし,
殊に神経芽腫のような希少な小児がんでは,患児はもとより患児家族は疾患情報の少なさから
不安や心配といった相当な精神的負担を抱いていることと思います。

これからもユニツキシンⓇ点滴静注のような小児の希少疾患に対する治療薬の開発を期待し,
患児や患児家族の負担が軽減されることを切に願います。

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