東京では6月に入って映画館の営業規制が緩和され,
封切が延期になっていた映画が続々と公開されています。
文句なしに楽しめたのは,スパイク・リーがデヴィッド・バーンのライブの模様を
映画化した『
アメリカン・ユートピア』。
かつて某野外音楽フェスで政治について考えるコーナーが企画されたところ,
「音楽に政治を持ち込むな」という意見が主催者に寄せられたことが話題になりましたが,
そんな意見をお持ちの方にこそぜひ見ていただきたい映画です。
アメリカはパフォーマ―もオーディエンスも“大人”でしなやかですね。
デヴィッド・バーンを知らない人でも十分に楽しめると思います。
アンソニー・ホプキンスが認知症症状の進む父親を演じ
アカデミー賞主演男優賞を受賞した『
ファーザー』は,
認知症の人の見る世界を疑似体験させられているようで,
私も含め
そろそろ先が見えてくる年代の人には正直,厳しい内容だと感じました。
が,予想通り映画館に集まっていたのはそんな年代の人ばかり。
認知症の方をこれから介護することになるかもしれない人,
自分が認知症になって介護される側になるかもしれない人。
誰が見ても身につまされること必至なのですが,
だからこそ映画の親子を自分に置き換えて
自分だったら…,と考えておきたいのかもしれません。
身につまされると言えば,
吉永小百合さんが在宅医を演じた『
いのちの停車場』と,
安楽死を選んだ母とその家族を描く『
ブラックバード 家族が家族であるうちに』です。
痛みを取ることの難しい症状,
進行を抑えられない難病を抱えた人の,
本人はもちろんのこと,家族の苦悩はいかばかりか。
いずれの映画も「安楽死」がテーマのひとつとなっていますが
その是非はともかく,
老いること,病を得ることがこれほどまでに否定され,
さらにはなかなか死ねない,死ぬことが難しくなっている現代において,
考えさせられる,考えなくてはいけないと思わされる要素が満載の映画です。
それにしても,
吉永小百合さんの父親を演じるのが
吉永さんと同い年の田中 泯さんって一体。
ちなみに私が行った映画館はどこも前後左右は空席にされており,
換気も定期的に行われているとのことで,「安心安全」に映画を楽しめました。
今は家に居ながらにして,さらには移動中でも映画を観ることができますが,
たまには映画館で楽しむのもいいと思いますよ。
(梅)