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山中静夫氏の尊厳死

2020年3月3日

世の中は新型コロナ一色,
不要不急の外出は控えるようにとのことですが,
公開中の映画「山中静夫氏の尊厳死」を観に行ってきました。

それにしてもこのタイトル,もうちょっとなんとかならなかったのか・・・
と言いたくなるような重さ,カタさですが,
原作は現役の医師であり,芥川賞作家でもある南木佳士先生による同名小説とのこと。
93年発表の小説ですが,多死社会を迎えつつある今の日本においては,
このストレートさがむしろいいのかもしれません。

映画館のロビーには,パンフレットと一緒に
日本尊厳死協会副理事長の先生が書かれた本や
エンディング・ノートなどが販売されていて,
ちゃんと終活しましょう,尊厳死協会が推奨する「リビング・ウィル」を残しましょう,
と訴えるような映画なのかしらん?と一抹の不安がよぎりましたが,
「エンディング・ノート」や「リビング・ウィル」どころか,
タイトルの「尊厳死」という言葉すら出てこない

末期がんの男性(山中静夫氏)と
彼を看取る医師の日々が淡々と描かれた静かな作品でした。

ところで「リビング・ウィル」には,
日本では法的な保証が何もないということをご存じでしょうか。
そのため,「延命治療は拒否する」という意志を文書に残していても,
いざとなると「どんな姿でも生きていてほしい」という家族の思いが尊重され,
本人が望んでいなかった延命治療が行われることがあります。
そのようなことがないようにと,
患者の意志に反する処置をした医師・家族には罰則を,
と訴える患者さんもいますが,
そういったことの法制化・罰則化は,現場の硬直化を招くように思います。

さて,先の映画では,
転院について家族と意見が一致していないことを医師にとがめられた山中静夫氏が,
「いいんです,死ぬのは私なんですから」
と言い切るシーンがありました。
リビング・ウィルを残していたわけではなく,
エンディング・ノートも人生会議なんて言葉もなかった時代に,
山中静夫氏はなぜ希望どおりの最後の日々を送り,
最期の瞬間を迎えることができたのか。

そして家族もそれを受け入れることができたのか。
外出しづらい状況ではありますが,関心のある方はどうぞ映画館へ。

(梅)
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