東京で開催中のザ・ローリング・ストーンズ展に行ってきました。
(TOC五反田メッセ・5月6日まで)
メンバー愛用の楽器が多数展示されていたり、
録音スタジオを再現したスペースがあったりと、
今年デビュー55年を迎える現役の“バンドとしてのストーンズ”を
前面に出した展覧会でした。
一昨年に開催されたデヴィッド・ボウイ展では、
かつてボウイが薬物中毒だった頃に愛用していた、
コカイン摂取用の耳かきのような
小さなスプーンなども展示されていましたが、
ボウイ以上にどっぷり薬に浸かっていたストーンズの一部メンバーの、
そういった面は今回の展覧会では一切触れられておらず、
とても健康的でクリーンな印象でした。
それにしてもかねがね思うのは、
過去にあれだけ薬を乱用していながら、
70歳を過ぎても元気にヨーロッパツアーだの
北米ツアーだのができるというのは、
一体どういうことなのでしょう。
(ボーカルのミック・ジャガーは先日心臓手術を受けましたが、
年内にもツアーに出ることが検討されているようです)
かつて、特に1960年代から70年代にかけて、
多くのミュージシャンが薬物で命を落としました。
でも、そこをくぐり抜けた人たち
(ポール・マッカートニーとかエリック・クラプトンとか)は、
異様に元気です。前者と後者で何が違っていたのでしょうか?
ストーンズのギタリスト、キース・リチャーズの自伝によると、
薬物にどっぶり浸かっていた頃、1日の始まりにまずしていたことは、
その日使う薬を選んで摂取する順番を決め、
それぞれの摂取量を厳密に計算することだったそうです。
ストーンズ展でもライブの予定や感想がびっしり書き込まれた、
キースの若い頃の日記帳が展示されていましたが、
こういうところでもその几帳面さが発揮されていたのですね。
↑展示されていたキース・リチャーズの1963年の日記
(実物はとても小さい)
と、感心している場合ではありません。
日本でも昨年、大麻所持の容疑で高校生が逮捕されるなど、
薬物乱用の広がりが問題となっています。
その後、薬からすっかり足を洗ったキースは、
来日した際のインタビューで
薬物を乱用する若者にメッセージを求められ、
ひと言「Keep alive!」(生き延びろ!)と答えました。
別のインタビューでは、
自分がこれだと信じたものは、何があっても絶対に手を離すな、
と語ったこともありました。
生き延びるためにやるべきことは何か、
手に握りしめておくべきものは何か。
薬物依存からの離脱はそんな甘っちょろいもんじゃないよ、
と言われそうですが、どん底から這い上がるのに必要なものって、
案外そんなものではないかと思います。
というわけで、
今、薬物依存と闘っているあの人に、
Keep alive!
(梅)