安倍首相は10月15日,来年10月に消費税を予定通り10%に引き上げる方針を
表明しました。これまで安倍政権下で過去2度の消費税率引き上げ延期が
ありましたが,今回は実施を1年後に控え事前の表明となりました。
【過去2回の引き上げ延長】
2014年11月:2015年10月の税率10%への引き上げを2017年4月に1年半延期。
2016年 6月:2017年4月の税率引き上げを2019年10月に2年半延期。
そして
2018年10月:2019年10月に税率10%に引き上げる方針を表明。
また,「あらゆる政策を総動員し、経済に影響を及ぼさないよう全力で対応」
するとし,その一環として軽減税率を導入し,対象品目の現行8%の税率維持を
掲げています。
その対象は,以下の2種類。
① 飲食料品の譲渡(食品表示法に規定する食品(酒税法に規定する酒類を
除く)の譲渡をいい,外食等を除く)
② 定期購読契約が締結された週2回以上発行される新聞の譲渡
軽減税率制度の対象品目(財務省ホームページより)
資料右下にある通り,医薬品,医薬部外品は軽減税率の対象外となります。
医療用医薬品においては,通常は事前に実勢価の調査を行い実施されますが
消費税の導入,税率変更を伴う過去の薬価改定は以下のようなに行われてきました。
【過去の消費税率引上げ時の薬価改定の方法等について】
<薬価調査の実施有無>
平成元年:薬価調査は実施せず
ただし,過剰転嫁とならないよう改定率に「0.9」を乗じている
平成 9年:薬価調査を実施した上で,2%分を上乗せ
平成26年:通常の改定年度であり,薬価調査を実施した上で3%分を上乗せ
(中医協総-6 30.9.26 より)
11月14日に開催された中医協・薬価専門部会で次回改定は消費税率の引き
上げと同じく来年10月に行うべきとの方針で一致。
「実勢価改定と消費税引き上げ相当分(2%分)の転嫁を同時に行うこと」
とし,前回の平成26年消費税改定時の方法で進める方向性が打ち出されました。
また,実勢価に基づく後発品の価格帯集約,基礎的医薬品,最低薬価の
ルールは適用する,といった現行制度についての踏み込んだ議論が始まって
おり,今後は製薬業界団体の意見聴取も行われます。
安倍首相は税率引き上げを表明し,各所で税率引き上げに向けた方針が
打ち出されているものの,その前後の菅官房長官の発言などには最終判断は
『経済状況で』との含みを持たせています。前回の引き上げ再延期発表の
タイミングは実施予定の10か月前であることを考えると,もし再々延期する
際のリミットは来月ということになるでしょうか。その動向が気になります。
(お)