5月24日に都内で開催された乾癬に関するプレスセミナー
(主催:ヤンセンファーマ株式会社)に行ってきました。
乾癬とは主として皮膚に症状が現われる慢性の疾患です。
皮膚が赤くなったり(紅斑)盛り上がったり(浸潤・肥厚),
また表面に銀白色のかさぶた(鱗屑)が厚く付着して,
それがフケのようにポロポロと剥がれ落ちる(落屑)といった症状で患者さんを悩ませます。
このほか、かゆみや関節の痛みなどの全身症状が起きることもあるそうです。
近年は乾癬の全身性炎症という病態が糖尿病治療の阻害や動脈硬化,心筋梗塞を誘引し,
乾癬をさらに悪化させるといった「乾癬マーチ」という概念も提唱されており,
疾患のコントロールはその他併存疾患への影響の面からも重要とされています。
乾癬の原因はまだ完全には判明していないそうですが,
免疫作用の過剰な働きによる表皮細胞の異常増殖によって起こるといわれています。
皮膚のターンオーバー(新陳代謝)は通常であれば28~40日周期で繰り返されているのに対し,
乾癬患者さんの場合,周期が4~5日と極端に短くなるため
皮膚の厚みが増し,積み重なった角質がフケのように剥がれ続けてしまうのです。
こういった症状は頭皮やひじ,ひざなど人目にさらされる部位に出ることが多く
顔や爪にまで現われることがあるそうです。
このため患者さんは常に周囲からの視線を意識してしまうようになり,
行動が消極的になってしまう方も少なくないのだとか。
そんなことから乾癬の問題は身体的な負担よりも,むしろ精神的な負担にあるともいわれているようです。
落屑によって不潔な人という印象を与えてしまうのではないかと悩み,
濃い色の服を着ることを避けるようになったり,夏でも長袖の服しか選ばなかったり。
セミナーで登壇された患者さんは「顔や爪に症状が現われたときには人と会うことがとても怖かった」
といったお話をされていました。
乾癬は自己免疫疾患によるものですので,人にうつるようなことは決してないのですが,
その皮膚症状と「カンセン」という疾患名から,「感染」する疾患だと誤解されやすいことも
患者さんをより辛い立場にしているといいます。
「乾癬について一人でも多くの人に知ってもらい,理解が得られるようになれば救われる患者さんもいる」
という患者さんの言葉が印象的でした。
何にでもいえることですが,正しい知識は人への優しさにつながるということを
考えさせられるセミナーでした。
ちなみにこの疾患,残念ながら現在のところまだ根本的な治療方法は見つかっていません。
しかし、適切な治療を行うことで,症状が現われないようにすることは可能になってきているそうです。
これまでは治療を続けていてもなかなか効果がみられず,患者さんが精神的に疲れ果て
消極的になってしまうことで治療を中断してしまうケースも多かったと聞きます。
しかし最近では外用療法,光線(紫外線)療法,内服療法,生物学的製剤の注射療法と
治療の選択肢は広がり,患者さんの症状や希望に合った治療が可能になってきているそうですので,
一旦治療をあきらめてしまった患者さんにも,ぜひもう一度疾患と向き合って自分に合う治療法を
見つけ出していただき,一人でも多くの乾癬患者さんの日常が明るく充実したものとなればと思います。
(あ)
乾癬の皮膚症状を再現した人形
セミナーでは乾癬患者さんの声も紹介されていました。