先日,子どもが通っている保育園でアタマジラミ症が発生しました。
保育園からの「お便り」でシラミの感染を知った際,真っ先に思い浮かんだのが,
子どもたちが集団で頭に薬剤を散布されているモノクロ映像でした。
現代の日本でシラミの感染症はよくあるものなのかと,調べてみたところ,
アタマジラミ症の発生件数は,
1971年の有機塩素系殺虫剤の使用禁止に伴い1980年代初めにピークを迎え,
1982年に登場したピレスロイド系殺虫剤により感染者数は減少したものの,
1994年以降,増加傾向にあるそうです(国立感染症研究所ホームページより)。
1994年以降,アタマジラミ症の発生件数が増加傾向にある理由は,
海外との交流が盛んになったこと,そして(私もその一人なのですが),
シラミの感染を知らない世代が増えたことが挙げられるようです。
アタマジラミは,その名のとおり頭髪に寄生するシラミです。
感染すると,シラミに血を吸われ痒みを伴います。
特に幼児や小学校低学年の子どもは,子ども同士で頭をくっつけて遊ぶことが多く,
保育園では昼寝の時間もあるので,感染する確率が高いようです。
また,頭を拭いたタオルの使いまわしなども感染の要因となるので,
水遊びが増えるこれからの季節は,特に注意が必要です。
ちなみにアタマジラミ症に感染してしまったら,
ドラッグストアなどでシラミ駆除用のシャンプーが販売されていますので,
それを使いシラミを除去します。
これまで,弊社発行の『新薬と臨牀』では“過去の病気”と思われがちの
結核や梅毒といった感染症について,いくつか取り上げてきました。
今回このブログで取り上げたアタマジラミ症についても
1980年代前半の一時期に比べると発生件数は減少しているものの,
実はすぐ近くに存在していました。
最近の医療現場では,こういった感染症を診察する機会が少なく,
その結果,診断が遅れるケースもあると言います。
『新薬と臨牀』では,いわゆるCommon Diseaseだけではなく,
こういった“過去の病気”と認識される傾向のある感染症や,希少疾患などにも焦点を当て,
引き続き医療者の方々に情報を提供していきたいと思います。
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