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「日和山カフェ」へようこそ

2018年6月14日

5月最後の土曜日,石巻赤十字病院の元看護師・佐藤京子さんが始められた
「日和山カフェ」を見学させていただきました。

看護師から喫茶店マスターへの華麗なる転身,ではありません。

「日和山カフェ」は,がん患者さんやそのご家族,ご遺族,
医療従事者やがんに関心のある方が,同じテーブルでお茶を飲みながら
「がんについて,人生について」語り合う場
として,
月に1回,公民館などを借りて開催されるカフェです。

がんと診断されたその日から,
患者さんはさまざまな問題を抱えることになります。
治療法の選択,家族にどのように伝えるか,仕事はどうするか。
二人に一人ががんになるといわれるいま,
もはやがんは不治の病ではなく,働きながら治療をする人もたくさんいます。
とはいうものの,治療が終わっても常に再発への不安がつきまとい,
治療による後遺症に悩まされる人もいます。
そしてそんな不安や悩みは,
親しい友人や家族に対してもなかなか口にすることができず,
相談できる場も限られています。


そんななか,がん患者さんやがんサバイバーといわれる方々が,
自身の不安や悩みを気兼ねなく話すことができる「日和山カフェ」のようなカフェが,
ここ数年全国的な広がりをみせているのです


私がお伺いした日は,てるてる坊主とあじさいの飾り花が
カフェの参加者を迎えていました。
まだ生まれたばかり,湯気が立っているようなこちらのカフェは,
患者さん自らもカフェづくりに参加されています。
てるてる坊主とあじさいの花飾りも,患者さんによるものです。

「てるてる坊主にはみなさんの心が晴れるように,という願いを,
あじさいには,少し先の季節に思いを馳せていただけたら,という願いを込めました」


患者さんは,目の前の問題や不安にとらわれて,
周りが見えなくなってしまうことがあると聞いたことがあります。
カフェは,いろんな立場の人と対等に話すこと,聴くことを通して,
問題解決の糸口を見つけたり,
少し違った視点で物事を考えたりするきっかけが生まれる場
であると同時に,
自分の問題や不安を一旦脇に置いて,
気持ちの余裕をつくることのできる場
でもあるのかもしれません。

石巻赤十字病院では,やはり佐藤さんの働きかけで,
がん患者さんのための「就労支援カフェin いしのまき」も始められています。
カフェには患者さんだけでなく医療従事者や地元の商工会議所など行政の方,
企業の方も多く参加されているそうです。

さて,弊社発行の『新薬と臨牀』では,8月号以降,
このような医療従事者が運営・参加するカフェ形式の患者さん支援を,
不定期ではありますが取り上げていく予定です。

8月号では「日和山カフェ」が生まれるきっかけとなった,
順天堂大学の樋野興夫先生による「がん哲学外来」について,
樋野先生ご自身にご紹介いただきます。
「がん哲学外来」は,医療の隙間を埋めることをめざして始められた,
医療者と患者さんがフラットな立場で対話をする「外来」です。

いずれ「日和山カフェ」や「就労支援カフェin いしのまき」も
誌面でご紹介できればと考えています。乞うご期待・・・!
日和山からの眺め。
ちなみに「日和山」は石巻の海を望む標高約60メートルの山。
かつて船乗りが天候を見るために利用した「日和山」は,
実は日本各地にありますが,3.11のときに多くの人が避難し,
寒さのなか励ましあいながら一夜を明かしたという石巻の「日和山」は,
地元の方にとっては特別な場所です。

(梅)
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