先日,“超高齢社会における緩和ケアのあり方”をテーマとしたシンポジウムに参加した際,
会場の医師からこんな発言がありました。
治療のためとはいえ,若者が献血してくれた貴重な血液を,
90歳も過ぎた高齢者が湯水のように使うのを見ているとやりきれない,
輸血しか方法がない,と言われれば,
患者も家族も当たり前のように輸血を続けたり高い薬を使い続けたりするが,
それはいかがなものかと思う,
国は指針をちゃんと作った方がよいのではないか,
患者教育も必要と思うがそれは医療者の仕事なのか?
公共広告機構などで患者教育になるようなCMを流したらよいのではないかと思うが
みなさんはどうお考えか・・・
終末期医療,ことに高齢者の医療がテーマとなると,
このような意見は必ずと言っていいほど目に,耳にします。
この発言だけを切り取るととんでもないことのように思う方もいらっしゃるかもしれません。
ただ,亡くなる直前まで「俺は絶対死なない」と治療を希望し続けた91歳の患者さんと,
その姿を見ていてとてもつらかったという家族の話や,その一方で
年金が入らなくなったら困るからと無理な治療を続けさせようとする家族の話
などを聞くと(これらは特別な例ではないようです),
社会資源が限られている以上,今のままでいい,
というわけにはいかないのだろうと思います。
厚生労働省は今年の春に,
75歳以上の進行がんの高齢者には抗癌剤の延命効果は少ない,という調査結果を発表し,
今後大規模な調査を重ねて高齢者に特化した治療指針の作成を進める,
という方針を発表しました。
いずれ何らかの指針が発表されることと思われますが,
さてそのような指針ができたところで,患者さんや家族にどのように伝えられるのか?,
ということが気になります。
患者教育ももちろん必要だと思いますが,
医療者が学んだり,考えたりしなければならないこともあるのではないか,
とも思うのです。
「これがいい,これでいこう,って決めてどんどん推し進めていくことには,必ず落とし穴がある」
これは以前,国が推し進める在宅医療・在宅での看取りについて
ある先生がおっしゃった言葉です。
実際,在宅医療には多くの診療所やクリニックが参入しましたが,
その結果現場では様々な問題が起きているようです。
終末期医療に関する問題はデリケートなだけに,
そういったことも常に念頭に置いて,いずれ自分や自分の身内の問題となることと意識しながら,
推移を見守っていきたいと思います。
(梅)