去る5月21日は,科学者・野口英世の90回忌でした。
ニューヨークでは,現地の医師らでつくられた「ニューヨーク野口英世記念会」により
墓前祭が開かれたとのこと。
前述の報道で知るまでは,恥ずかしながら野口英世の命日を知りませんでした。
それどころか,どのような研究をし,どんな生涯であったかなど,
久しく意識にのぼることもなかったように思います。
ただ,子どものころに読んだ学習まんがのことだけは,今も記憶に残っています。
野口英世を主役にした伝記まんがです。
細菌学の研究者としてのアメリカでの功績や,
その勤勉さで周囲を驚かせたこと,
研究していた黄熱病に自らも侵されて亡くなったことなど
印象的な場面は多いですが,もっともよく覚えているのが
左手の指がくっつきあってしまう原因となる幼少期の火傷の思い出と,
「ならばこの子には学問を」と,母が必死の思いで息子を育てた描写でした。
細かい表現などはもう思い出せないですが,
周囲のからかいにもめげずに学問で頭角をあらわしていくさまや,
農業で息子を支える母の姿に,子どもながら心動かされたのか
何度も読み返した記憶があります。
特別,科学に興味のある子でもなかったのですが,漫画だったからでしょうか。
このシリーズではマザーテレサもお気に入りでした。
究めるというのは,かならずそこに至る地道な努力があり,挫折があるものだなと思います。
「偉業」を成す人だけでなく,すべての人の来た道が,
その人を形成するためになくてはならないものであり
そういったところに,伝記の面白さが凝縮されているのかもしれないと思います。
また,その分野を専門家と同じレベルで学ぶのが困難であっても
まず「人」から入るのはいいのかもしれないと思いました。
野口英世の研究にしても,その人となり,親子の絆も含めた「人」としての魅力や
研究に傾ける情熱の一端を知ることで,
その功績や,現在の医療につながる発見について
深く知ることができるかもしれません。
伝記のみでなく,存命の研究者を取り上げたノンフィクションでは,
たくさんの名著が出版されているようです。
少しずつ読んでみようかな,と考えている今日この頃です。
(い)