今月11日,昭和大学で開催された
ヒューマニズム・コミュニケーション研究会主催の講演会に行ってきました。
テーマは「在宅での看取り」。
登壇されたのは,在宅ホスピスのパイオニアとして知られる
ふじ内科クリニックの内藤いづみ先生と,訪問看護師の茂木美津枝先生です。
内藤先生とは,弊社発行の『新薬と臨牀』に
エッセイをご執筆いただいて以来のおつきあいですが(64巻11号掲載),
ご講演を聴かせていただくのは初めてでした。
“看取り”についての講演というと,重く,暗いものを想像されるかもしれません。
でも,おふたりのご講演は暗いどころか,とても明るいものでした。
ことに内藤先生のご講演は,終始笑いの絶えない,
それでいて生活の場で看取ることに対する先生の熱い思いに溢れた感動的なものでした。
遠方から足を運ばれた方々がいらしたのもうなずけます。
『新薬と臨牀』で今年の1月号まで1年あまりにわたって連載した、
ホスピスや在宅での看取りに長年携わってこられた方々によるエッセイ
「私の死生学・死生観」がきっかけとなり,先生方のご講演に足を運んだり,
直接お目にかかってお話を伺ったりする機会に恵まれました。
やがて気がついたことは,看取りに携わる医療者の方々は,
ユーモアのセンスをもった,人間的にとても魅力的な方が多いということでした。
そしてそれは,決して生まれながらのものなどではなく,
たゆまぬ努力の結果であるということも少しずつわかってきました。
ご講演での内藤先生の最後のお言葉が,会場の医療者に向けての
「感性と実行力を兼ね備えた,総合的な人間力を磨いてください」
というものであったことからもそれは窺えました。
昨年,在宅医療を選択したある有名タレントの方が,
医師からの「どこで死にたい?」という言葉に大変なショックを受け,
失意のままに亡くなったということが週刊誌等で話題になりました。
そういう質問をすることが,問題だとは思いません。
私の尊敬するある先生も,面談の初日に「どこで死にたい?」とお尋ねになるそうです。
でも,そんな先生に家族を看取っていただいたある方は,
自分が死ぬときも同じ先生に看取ってほしいとおっしゃっています。
問題は,「まだ逝きたくない」とか「逝かせたくない」とか,
さまざまな思いが交錯するなかで,医療者が,患者さんやご家族と
どのような関係を築いていけるか,ということだと思います。
長い間,病院で死ぬことが当たり前だった日本ですが,
今は国の後押しで,在宅医療・在宅での看取りがどんどん進められています。
長年勤務医として働いていた医療者の,在宅医療への参入も多いと聞きます。
先のタレントの方のような辛い思いをされる患者さん,ご家族が増えることのないよう,
看取りの現場では,やさしさと思いやり,
そして人間的な魅力に溢れた医療者が患者さんのそばにいてほしい。
そんな思いを胸に講演会場を後にしました。
(梅)