昨年9月号からスタートしました月刊誌『新薬と臨牀』の連載頁「私の死生学・死生観」も,
11月号で15回目を迎えました。
主に長年終末期医療に携わってこられた医療者・宗教者の方々に,
ご自身の死生観について執筆いただいている連載です。
11月号は国立がんセンター名誉総長で,公益財団法人日本対がん協会の
会長でもいらっしゃる垣添忠生先生にご執筆いただいています。
垣添先生といえば,2009年に出版された
『妻を看取る日 国立がんセンター名誉総長の喪失と再生の記録』(新潮社)
を思い出される方も多いのではないでしょうか。
既婚者であった12歳年上の女性と駆け落ちの末結婚,その最愛の奥様ががんを発症され,
最善の治療を尽くしたにもかかわらず亡くなられます。
家でたったひとりで奥様を看取られたときのこと,
その後の喪失感に苦しむ日々と,立ち直るまでの過程を,
男性が,しかも国立がんセンターの名誉総長という立場の医師が,
自身の感情を包み隠すことなく率直に綴ったこの本は,当時大変な話題となりました。
今回ご執筆いただきました御原稿では,奥様の死を通して
ご自身の死生観(というか人生観)がどのように変わったか,
ということをご執筆くださいました。どうぞ,ご一読ください。
ところで,垣添先生が御原稿の中で,
四国遍路に行かれたことを書かれていたのでふと気がついたのですが,
いままでこの連載をご執筆いただいた15人の方のうち,垣添先生を含め,
私が知っているだけでも4人の方(すべて医師)が四国遍路に行かれています。
15人のうちおふたりがクリスチャンであることを考えると,
約1/3の方が行かれたということになります。
これはかなりの割合ではないでしょうか。
しかも皆さん,“歩き”で廻られているのです。
今年の秋に行かれた先生のお話によれば,“歩き遍路”はいまや絶滅危惧種(?)で,
ほとんどの方が車(観光バス)や自転車で廻られているのだとか。
また別の先生が,“先達”と呼ばれる公認の案内人の方から聞かれた話では,
四国遍路に来られる方は医師と教師が多いとのこと。
いずれも,人と深くかかわる職業です。
「なにか,割り切れないものを抱えているひとたちなんだろうね」。
その話を聞かせてくださった,長年緩和ケアに携わってこられた先生の言葉が印象的でした。
その先生から,私も四国遍路に行くように,
それも歩きで,ひとりで,と勧めていただいたのですが,
フルマラソンと四国遍路は一生自分に関係がないと思っていたのです。
勧めてくださった理由がわかるだけに,
行かなかったらずっと自分の中でひっかかったままになるのかなあ,
えらい宿題をもらっちゃったなあ,と思っていたところ,
垣添先生が四国遍路について書かれた『巡礼日記』(中央公論新社)が発売されたのを知り,
早速読んでみました。
垣添先生はあえて真夏を選ばれたので,厳しさはなおのことだったと思われますが,
そのあまりの壮絶さに,勧めてくださった先生には申し訳ないのですが,
やはり自分には一生関係がないと思いました・・・。
でも,本そのものは大変面白く,体力・気力に自信のある方であればきっと
「自分も行ってみよう!」と思われると思います。
『新薬と臨牀』11月号と併せて,お勧めします!
(梅)