40代も半ばを過ぎると,友人たちとの話題も以前とは少し異なってきます。
普段連絡を取り合う友人が,男女にかかわらず独身でひとり暮らし,
または私のような既婚でも子供のいない人たちばかりのせいか,
長いあいだ学生時代の,あるいは知り合った20代,
30代の頃の延長のような会話を楽しんでいたような気がします。
それがここ数年,私も含め,何人かの友人が親の介護や死を経験し,
自分の老後はどうなるのだろう,自分はどんなふうに死んでいくのだろう,
というようなことが話題に上るようになりました。
そんなとき,独身のひとり暮らしの友人から
「あなたはだんな様がいるからいいわよね」と言われることがあります。
夫がいるから老後は寂しくないし,孤独死もない,ということらしいのですが,
夫がいても今の日本の平均寿命からいえば女性のほうが長生きしますし,
私の知人のようにひとまわり以上年下(!)の男性と結婚していても
夫に先立たれるということもありますから,
“伴侶がいるからいい”とは一概には言えないでしょう。
最近,伴侶を亡くされた方々の手記を読んだり講演を聞いたりする機会があり,
長年連れ添ってきた伴侶,あるいは一緒に年を重ねていこうと思っていた伴侶を亡くすことが,
いかに精神的に大きな打撃となるかということを感じたのでなおさらです。
もちろん,夫が亡くなった途端に生き生きとし始める妻が結構多いといいますから,
これもまた一概には言えませんが・・・
さて,昨年9月にスタートしました『新薬と臨牀』の連載頁
「私の死生学・死生観―医療者から医療者へ,そして患者へ―」は,
明日発行の6月号で10回目を迎えます。
今までは長年終末期医療に携わってこられた先生方にご執筆をお願いしてきましたが,
今回は鳥取市内で小児科医院を開業されている奥田浩史先生にご執筆いただきました。
今までご執筆いただいた先生方の「死生観」が,看取った患者さんや,
ご両親の死が背後にある「死生観」であったのに対し,
奥田先生の「死生観」は,奥様の死を通して得られた「死生観」です。
奥様を亡くされてからのその喪失感,悲しみと向き合ってこられた過程を,
ありきたりではない,10年という月日をかけて深められた言葉でご執筆くださいました。
10回目にふさわしい素敵な御原稿をいただけたと思います。
タイトルは「贈り物」です。
ぜひ,ご一読ください。
(梅)