A：
選挙前になると組織票の確保という意味合いで「日医」の名前を耳にします。地方の
医師会が反旗を翻した－とか。その「日医」は「開業医の団体」なのでしょうか？
＜解説１＞
現在の日本医師会は1947年11月に設立されました。
それ以前，1916年11月に設立された大日本医師会（初代会長：北里柴三郎）は開業医
の組織として設立されましたが，当時，日本には国立大学附属病院や陸海軍病院など官
公立病院以外の病院はほとんどなく，開業医の組織として設立されたのはある意味必然
と言えます。
その後，第２次大戦期を経て，戦後まもなく今の日本医師会（日医）が設立されまし
た。当時の医師会設立要綱によると，「新生医師会は医師の自由な意思と自覚によって
設立されるものとする」と記されており，医師個人が加入する団体でした。当時は，戦
後の荒廃期ということもあって民間病院はほとんどなく，医師個人＝開業医（診療所）
で，開業医集団と言えなくもありませんが，その後，民間病院が増えるとともに病院長
や勤務医が増えてきました。
＜解説２＞
よくマスコミでは日本医師会のことを開業医（診療所）集団というように位置づけ，
日本病院会や全日本病院会など病院団体との対立軸に位置付け，病院と開業医で「診療
報酬を奪い合う」かのような取り上げ方をしていますが，病院団体は施設として加入し，
個人で加入する医師会とは自ずと性格が異なります。
やはり，マスコミが日医＝開業医集団として取り上げるのは，1957年から1981年ま
で日医の会長を務めた「けんか太郎」こと，武見太郎会長当時の印象が強く，それを現
在まで引きずっていると言えるでしょう。
＜解説３＞
なお，2023年12月１日現在の日本医師会会員数調査によると，日医会員数は17万5933
人です。内訳は病院や診療所の開設者などは8万2294人，病院などの勤務医は8万5473人，
研修医8166人。病院開設者（3898人）と勤務医，研修医を合わせた会員数は9万7537人で，
医師会員数の55.4％を占めています。これは診療所開設者（6万9058人）の39.3％を上回
り，日医＝“開業医集団”という指摘はどうやらあたらないようです。
