A:
いわゆる「医療費に占める薬剤費の比率」を「薬剤比率」と言います。
が,社会医療診療行為別統計(旧:社会医療診療行為別調査)では「薬剤料の比率」
を使い,厚生労働省が中央社会保険医療協議会に提出する「薬価制度等関連資料」の中
では「薬剤費比率」と使い分けているようです。
まず,社会医療診療行為別統計の「薬剤料の比率」とは,診療報酬明細書(レセプト)
の総点数に占める「投薬」「注射」などの薬剤点数の割合で,これには「投薬」「注射」
を包括した診療報酬点数や,DPC/PDPS(診断群分類に基づく,急性期入院医療の診療
報酬支払方式)のレセプトは対象外となっています。
これに対して,厚労省が中医協に提示する「薬剤費比率」は,医療保険の医療費に労
災保険,全額自己負担医療などを加えた国民医療費をベースに,労災保険などでも医療
保険と同じ割合で薬剤が使用されたものと仮定して国民医療費の薬剤費総額を算出し,
その割合を推計したものです。
<解説 さらに詳しく>
「薬剤料の比率」を年次推移でみると,1996年(6月審査分)は入院14.8%(投薬
3.8%,注射8.4%,その他2.6%),入院外41.4%(投薬35.0%,注射3.8%,その他
2.6%)でした。その後,慢性期医療や急性期医療で診療報酬点数の定額制,包括化や
後発医薬品の使用が進んだこともあり,2020年には入院9.1%(投薬2.6%,注射5.8%,
その他0.7%),入院外43.5%(投薬31.7%,注射10.1%,その他1.7%)となりました。
厚労省が中医協に提示する「薬剤費比率」の年次推移をみると,1996年度の国民医療費
28兆4540億円のうち薬剤費は6兆9700億円で,薬剤費比率24.5%。2020年度は国民医療
費42兆967億円,薬剤費9兆5600億円で薬剤費比率22.7%となりました。25年程で国民
医療費は47.9%増加し,薬剤費も37.2%増となっています。
「薬剤料の比率」「薬剤費比率」も慢性期医療や急性期医療の薬剤費が除かれているため,
実際の薬剤料に比べると割合は低くなっています。
というわけで,全体にしめる薬剤の比率の解説だったわけですが,2020年の薬剤比率
は22.7%。