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-バイオベンチャーのX社が、肺がんに効果がある抗腫瘍薬の開発権をZ社に導出-
な~んてニュースをこの業界では時折耳にします。
しかし、言われてみれば確かに「導出」という言葉は、日常生活ではあまり使われま
せんね。
「導出」を広辞苑で引くと「結論を導き出すこと」とありますが、医薬品業界などで使
用されている「導出」とは、例えばベンチャー企業などが医薬品開発で有望な化合物を
発見・開発した場合、製薬企業に医薬品の開発及び販売のために必要な知的財産の使用
を許可するという意味で使用されています。この場合、契約に基づいて知的財産の使用
を許可・委譲(導出)したベンチャー企業は、製薬企業の新薬開発段階、販売段階に応
じてライセンス収入を得ることができます。
医薬品の開発プロセスには、基礎研究→非臨床研試験→臨床試験→承認申請という段
階があり、製品化するまでには膨大な期間と資金が必要になります。基礎研究とは、医
薬品開発につながるような新しい物質を探索したり、化学物質を開発することで、そこ
から得られた物質が薬として効果があるかどうか動物実験で確認するのが非臨床試です。
臨床試験は、健康な人に薬候補を服用してもらうフェーズⅠ、限られた患者を対象に
したフェーズⅡ、より多くの患者を対象としたフェーズⅢに分けられ、医薬品として効
果が確定すれば、厚生労働省に医薬品として製造・販売に関する承認申請を行います。
ここまでにほぼ10年~20年かかり、この間に研究開発を断念するものもあるため、実際
に医薬品として世に出るのは1%あるかどうかとも言われています。
ベンチャー企業が医薬品候補を「導出」するのは、ほとんどが非臨床試験、臨床試験
の各段階で行われますが、どの段階で「導出」するかによって、ベンチャー企業に支払
われる金額は異なります。医薬品開発が進んだ後に「導出」するほど、金額は多額にな
るようです。