超高齢社会に突入した日本において,
医療費や介護負担などさまざまな問題を解決するひとつの手段として,
75歳以上の高齢者には生死を選ぶ権利が与えられることになりました。
死を選べば支度金として10万円を受け取ることができ,
薬剤による安らかな死が保障されます――
もちろん,これは現実の話ではありません。
しかし,
そう遠くない将来において,このような制度が導入されても
不思議ではないような気がするのは私だけでしょうか。
冒頭の制度「PLAN75」は,5月に開催された第75回カンヌ国際映画祭で
新人監督賞に該当するカメラドールの特別表彰が送られた早川千絵監督の
『
PLAN75』という作品での話です。
「自己責任」という言葉が当たり前のように使われ,
人の価値を生産性の多寡で量り,
役に立たない人間は排除しようとする不寛容な社会においては
「PLAN75」のような制度ができてもおかしくない,
しかしそんな未来は迎えたくない,という想いが
この映画を作る原動力になったとのこと。
映画では「PLAN75」が施行された日本で,
その対象となる人々,国の職員としてその制度を推奨する人々が交錯し,
さまざまなエピソードが繰り広げられます。
なんだか暗くて重い映画なんだろうな…と思われるかもしれません。
私もそんなふうに思いながら劇場に足を運びました。
ところが,予想に反して決して後味の悪い作品ではなく,
むしろ
確かな希望が感じられるものでした。
主演の倍賞千恵子さんの演技も,美しい映像も素晴らしい!
生きている限り老いること,死ぬことは誰にも避けられません。
「PLAN75」のような制度があってもいいんじゃないか,
と思う人もいるでしょう。
でもそんな人にこそ観てほしい映画です。
ちなみにこの映画の
パンフレットには,
弊社発行
『新薬と臨牀』の特別企画
「『安楽死』が問いかけるもの」(昨年12月号掲載)に御原稿をご執筆くださった
大谷いづみ先生(立命館大学教授/同大学生存学研究所副所長)が寄稿されています。
こちらもまた必見です!
(梅)