先日,新型コロナウイルスと終末期医療についてのオンラインセミナーに参加しました。
(「新型コロナウイルス感染症とエンドオブライフ・ケア」
講師:国立長寿医療研究センター 在宅医療・地域医療連携推進部長 三浦 久幸先生
主催:東京大学 上廣死生学・応用倫理講座)
海外からのさまざまな報告に基づいた内容の中で特に印象的だったのは,
感染者数・死者数ともに大変な数になっているアメリカでは,
心肺蘇生が必要な状態となった患者の治療について,
インフォームドコンセントではなくインフォームドアセントというものが
行われている,というものでした。
インフォームドコンセントは日本でもすっかり定着した印象がありますが,
インフォームドアセントってあまりなじみがないですね。
もともとは小児領域で使われている用語で,
治療についての決定責任を患者やその家族ではなく医師が負い,
医師がベストと考えられる治療方針を示して患者・家族からの了承を得る,
というものです。
子供に対しては本人がわかるように説明することが求められます。
そのインフォームドアセントがなぜ新型コロナの終末期医療で行われているかというと,
急激に悪化するケースの多い現場では,効果がないと思われる状況であっても
パニック状態になった家族が延命治療を選ぶことが多く,
それをなるべく防ぎたい,ということが背景にあるようです。
はっきり言ってしまえば限られた医療資源を有効に使うためなのですが,
アメリカの逼迫した医療現場を思うとやむを得ないことかもしれません。
ちなみにアメリカでは80%くらいの割合で
延命措置をしないという提案が受け入れられているとのことです。
もちろん,このインフォームドアセントに基づいて治療の中止を提案する際には,
事前指示書を残している患者(アメリカでは残している人が多いそうです)ではその内容を,
指示書がない場合は家族に患者の価値観
(生活の質を重視するか,とにかく生きながらえることを重視するか,など)を確認し,
生活の質を重視するという人に対してのみ行われているとのことでした。
このインフォームドアセントについては,
医師のパターナリズムに基づくものだという批判も一部であるようです。
とはいえ,がん治療の一部の現場において,膨大な情報を一方的に提示して
「はい,どうするかはあなたが決めてくださいね」
という患者さんへの“丸投げ”が行われているという話を耳にしたことがありますし,
決断に家族がかかわった場合,のちのち家族がつらい思いをすることもありますから,
必ずしも悪いことではないのではないかと思うのですが,
皆さんはどう思われますか??
(梅)