緊急事態宣言がようやく解除となり,
少しずつ「日常生活」が戻ってこようとしています。
とはいえ「日常」の定義がすっかり変わってしまったわけで,
この変化はいつまでのものなのか,定着してしまうのか,
あるいはまた元に戻る日が来るのか,考えずにはいられません。
関心を持っていることのひとつが,
「看取りの場」は変わるのか?ということです。
一部で報道もされていましたが,新型コロナウイルスの感染者数が増えるなか,
「入院患者と面会できない」という問題が浮上し,
緩和ケア病棟からは多くの患者さんが在宅に移られたようです。
ある先生のお話によれば,
治療の手立てがなくなった患者さんやご家族に在宅を勧めると,
「見捨てるんですか!?」「追い出すんですか!?」
と言われることもあるそうですが,
今回ばかりはみなさん一刻を争って在宅に移られたとのこと。
「面会できること」は病院の医療設備やスタッフ以上の価値があったということかと
その先生はおっしゃっていました(若干嘆き節)。
在宅に移られた方々のなかには,
本当は家で過ごしたいと思いながらもさまざまな理由から
緩和ケア病棟にいらした方も多かったのではないかと思います。
家で過ごせないさまざまな問題を「会いたい」という一点が突破したのだとしたら,
それってなかなかすごいことではないかと思います。
「会いたい」という思いは,
あらゆる問題をえいっと解決させてしまう力があるのですね。
看取りの場として病院が選ばれる背景には,
高齢の単身者,あるいは夫婦だけの家庭が多く,
一人で最期までみきれるのか,
日中,誰もいないときに何かあったらどうするのか,
といった問題,不安が大きいと思われます。
しかし,時代はテレワークですよ。
今後,コロナが終息しても家で仕事をする人は着実に増えるでしょう。
会社の近くに住む必要もなくなるかもしれません。
緩和ケア病棟の平均在院期間は約1カ月。長くて3カ月程度と言われています。
もう治療はできません,と言われてそれくらいの期間で亡くなる方が多いということです。
看取りのための数カ月の間,離れて住んでいる家族が集まって,
家で仕事をしながら看取る,ということができるようになるのではないでしょうか。
「会いたい」という思いで在宅に切り替えたご家族は,
その後どのような日々を送られたのでしょう?
「案外大丈夫だったよ」「うちにしてよかったよ」
という声が聞こえてくるようになれば,
看取りの場,看取りの風景は,少しずつ変わっていくのかもしれませんね。
(梅)