医情研通信 Column & Blog

社員's topics

で、何が変わって、何が変わらないのか?

2020年5月28日

緊急事態宣言がようやく解除となり,
少しずつ「日常生活」が戻ってこようとしています。
とはいえ「日常」の定義がすっかり変わってしまったわけで,
この変化はいつまでのものなのか,定着してしまうのか,
あるいはまた元に戻る日が来るのか,考えずにはいられません。

関心を持っていることのひとつが,
「看取りの場」は変わるのか?ということです。

一部で報道もされていましたが,新型コロナウイルスの感染者数が増えるなか,
「入院患者と面会できない」という問題が浮上し,
緩和ケア病棟からは多くの患者さんが在宅に移られたようです。
ある先生のお話によれば,
治療の手立てがなくなった患者さんやご家族に在宅を勧めると,
「見捨てるんですか!?」「追い出すんですか!?」
と言われることもあるそうですが,
今回ばかりはみなさん一刻を争って在宅に移られたとのこと。
「面会できること」は病院の医療設備やスタッフ以上の価値があったということか
その先生はおっしゃっていました(若干嘆き節)。

在宅に移られた方々のなかには,
本当は家で過ごしたいと思いながらもさまざまな理由から
緩和ケア病棟にいらした方も多かったのではないかと思います。
家で過ごせないさまざまな問題を「会いたい」という一点が突破したのだとしたら,
それってなかなかすごいことではないかと思います。
「会いたい」という思いは,
あらゆる問題をえいっと解決させてしまう力があるのですね。


看取りの場として病院が選ばれる背景には,
高齢の単身者,あるいは夫婦だけの家庭が多く,
一人で最期までみきれるのか,
日中,誰もいないときに何かあったらどうするのか,
といった問題,不安が大きい
と思われます。

しかし,時代はテレワークですよ。
今後,コロナが終息しても家で仕事をする人は着実に増えるでしょう。
会社の近くに住む必要もなくなるかもしれません。

緩和ケア病棟の平均在院期間は約1カ月。長くて3カ月程度と言われています。
もう治療はできません,と言われてそれくらいの期間で亡くなる方が多いということです。
看取りのための数カ月の間,離れて住んでいる家族が集まって,
家で仕事をしながら看取る,ということができるようになるのではないでしょうか。


「会いたい」という思いで在宅に切り替えたご家族は,
その後どのような日々を送られたのでしょう?
「案外大丈夫だったよ」「うちにしてよかったよ」
という声が聞こえてくるようになれば,
看取りの場,看取りの風景は,少しずつ変わっていくのかもしれませんね。

(梅)
コラム&ブログ Column 資料室 Archive 制作書籍 Books

Page Top