先日,縁あってこんな本を読みました。
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『ふたりぱぱ ―ゲイカップル,代理母出産(サロガシー)の旅に出る』(現代書館)
(ちなみに表紙のイラストは、『新薬と臨牀』8月号にご登場いただいた小野 春さんによるもの)
スウェーデン人男性と結婚した日本人男性が,
アメリカでの代理母出産で子どもを授かるまでの過程を綴ったものです。
ちょっと刺激の強い(?)本コラムのタイトルは,
この本の中からいただきました。
日本で生まれてくる子どもの18人に1人が
体外受精による出生(平成28年)という時代にあって,
“子どもは授かりもの”などという考えは古いのかもしれませんが,
代理母出産にはどうしても違和感がありました。
どんな理由があるにせよ,
人様の身体に負担をかけてまで子どもがほしいというのはどうなんだろう?
特別養子縁組という制度もあることだし・・・と。
さらに,代理母出産については,経済的に弱い立場にある女性が
高額の報酬を得るために請け負っている国もあることから,
マイナスイメージしか持っていませんでした。
同じようなイメージをお持ちの方,結構いらっしゃるのではないでしょうか?
しかし,この本に書かれている代理母出産の過程・実情は,
そういったイメージをことごとく覆すものなのです。
もちろん,エージェントによって違いはあるようですし,
大変高額で,つまり立派なビジネスになっていることは否めませんが,
代理出産を請け負う女性は経済的に弱い立場に「ない」,
ということが条件とされていたり,
依頼するカップルには,「代理母との信頼関係を築く」ために,
出産までの期間最低週に一度は電話やスカイプで(メールではダメなんですよ!)
代理母と連絡を取り合うことが義務づけられていたり・・・
そもそも代理母となる女性が,報酬目的でも,
身内のためでもなく代理出産を請け負うという心理が
私には全く想像できなかったのですが,本を通して
ああ,そういう考えもあるのか,と素直に受けとめることができました。
(本に出てくる代理母さんがまたとんでもなく素敵な方なんです)
では,代理母出産を肯定的にとらえられるようになったか,
というと,諸手を挙げて賛成!という気持ちにはなかなかなれません。
ただ,将来的に日本でも代理母出産を認めることになるのであれば,
同性カップルもその対象とすることを検討してもらえれば,と思いました。
性的指向のような,個人の意志や努力では
どうすることもできないことで生まれる苦痛を,
社会が変わることで減らしたり,なくしたりできるのであれば,
変えていくことを考えていかなければ,と思うのです。
ひとつ気になったのは,本書を書かれたカップルは
かつてイギリスで暮らしていたのですが,
同性婚が認められているイギリスであっても
同性のカップルには養子縁組のハードルが高いと書かれていたことです。
「子どもを育てるという経験がしたい」という希望を叶えるには
代理母出産が確実だったということで,
そのあたりがもっと柔軟になればと思いました。
同性婚どころか,同性パートナーシップすらまだまだ認められていない日本では,
同性カップルが養子縁組や代理母出産で子どもを育てるなんて,
夢のまた夢なのかもしれません。
でも10年前,20年前と比べれば,LGBTをめぐる問題は
着実によい方向に変わってきていると感じます。
いつか日本でも,子育てをする「ふたりぱぱ」や「ふたりまま」の家庭が
あたりまえになる(スウェーデンではあたりまえなのだそうです!),
そんな日が来るといいなあと思います。
最後になってしまいましたが、『ふたりぱぱ』、いい本です!
ぜひ手に取ってみてくださいね。
(梅)