医情研通信 Column & Blog

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日本がんサポーティブケア学会

2019年9月10日

第4回日本がんサポーティブケア学会学術集会「メインテーマ:がん医療を支えるキュアとケア
~より豊かな成熟社会をめざして~」
(会長:弘前大学大学院医学研究科 腫瘍内科学講座・佐藤 温先生)が
9月6日、7日に青森市で開催され,取材に行ってきました。

今年も,がん治療に携わっている医師や薬剤師,看護師などによる研究報告を中心に
シンポジウムや講演,ワークショップなどが次々と催され
アナライザーを使用した全員参加型の討論会など工夫されたプログラムもあり,会場は大盛況でした。
参加者の方々もみな,メモを取りながら熱心に聴講されていて
改めてこの領域における関心の高さを感じました。

さて,私が2日間の学会を通して思ったことは,一言でサポーティブケアといっても、
患者さんによって症状や生活の背景,考え方が異なる中で
一人として同じ状況に当てはまる方はいないということです。
どのプログラムにおいても、患者さん個々の状態をよく観察し,訴え(時には訴えの裏にある心理)を
よく理解したうえで治療やケアを行うことが重要
だと強調されていたことが印象的でした。

たとえば抗がん治療による外見の変化ということをひとつ取っても
どういう理由でどれほどの苦痛を感じるか(または感じないか)は
人によってさまざまだといいます。
仕事を続けるために便宜上…という方もいれば,
他人に「がん」と気づかれたくないとひたすら思っていらっしゃる方もいる。
中には自分の外見の変化が,病気の悪化に比例している気がして不安で辛いという方もいらっしゃるといいます。
そういう方々へのケアを,ただウィッグやお化粧で隠し通すということだけで終わらせていいのか,
患者さんを社会や人との繋がりから切り離さないように働きかけていくということが
アピアランスケアでは重要なことだということを知り,本質はそこにあったのかと衝撃を受けました。

また,がんによる腹部膨満感についても,治療内容やがんの進行度によって
原因は多様で,何が原因かによって必要な治療が大きく変わるといいます。
同時に慢性的な痛みや苦しみによってQOLを低下させている患者さんに対する
身体的,心理的ケアについても,現場ではとても必要とされており
治療目標やその方の価値観などよって介入のアプローチも異なってくるということでした。

これまで優先順位が低かったこれらの症状に対するきめ細やかな医療の提供が
追究されるようになったことは,大変心強いことですが,
同時に,一辺倒にはいかないこの領域の難しさを実感することとなりました。

サポーティブケアという分野は,だからこそエビデンスが確立されにくい領域だといわれています。
そのような中で試行錯誤を繰り返しながら日々研究をされている医療者の方々には頭が下がる思いです。

こういったがん医療の試みが,日本全国すべての地域に等しく広まることを切に願いつつ…。

弊社発行の「新薬と臨牀」では『がんサポーティブケアのいま・これから』と題した連載を掲載中です。
今月号(9月10日発行号)では金沢医科大学 腫瘍内科学講座の元雄良治先生に
「がん治療におけるサポーティブケアとしての漢方」についてご執筆をいただいております。

ぜひご一読いただけましたら幸いです。

(あ)
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